今年の雪の降り方は、いつもと違う? と感じた方が多かったのではないでしょうか。
2024年12月は、岩見沢や月形、そして渡島半島の江差周辺だけが、平年の2倍以上という大雪に見舞われました。一方、札幌では雪が少なく、インバウンドの観光客が岩見沢で雪と戯れる様子がニュースで取り上げられるほどでした。その後しばらくは道内全体で小康状態が続きましたが、2025年2月3日夜から4日朝にかけて、帯広では記録的なドカ雪となりました。わずか12時間で120cmの降雪という、かつてない激しい降り方でした。帯広在住の弊社職員の写真にあるように、まさに「恐怖さえ感じた」ということです。これは、十勝地方にドカ雪をもたらす典型的な「二つ玉低気圧」の気圧配置によるものでした。
極端な気象現象が発生すると、「これも温暖化の影響でしょうか?」と聞かれますが、それを証明するには数か月ほどの時間がかかりました。そこで研究者も工夫を凝らし、事前にある程度計算しておくことにしました。気象研究所は帯広のドカ雪の二週間後に、降雪が強かった時間帯(3 日23 時~4 日5 時)では、温暖化の影響で降雪量が約10%増加した、との発表をしました。
温暖化の影響を調べる「イベント・アトリビューション」という手法の中には、天気の動きを細かく再現できる高解像度の気象モデルを使ったシミュレーションがあります。この方法では、気温や水蒸気、海水温などの条件を、「もし温暖化がなかったら」と「今の現実の気象」とでそれぞれ設定し、大量のシミュレーションをあらかじめ計算しておきます。そうすることで、極端な天気が起きたときに、「温暖化がどれくらい影響したのか?」をすばやく示せるようになります。
写真1 帯広市内の住宅(丸谷聖一氏撮影)
図1 帯広アメダスの降雪量と積雪深
2025年2月3日~4日
5cmだった積雪深が翌朝には129cmになる
札幌も当初は少雪でしたが、2月に入ってから雪の日が増え、積雪の深さは平年値に近づきました。「帳尻が合ったね」と、何人かの方に言われましたが、私はこの言い方があまり好きではありません。というのも、自然現象は平均値のまわりにばらつきがあるのが普通であり、年ごとの降雪量も、下の図のようにかなり変動します。標準偏差の範囲に収まらない年が全体の3割ほどありますが、とはいえ平年の2倍や3倍といった極端な年は多くはありません。ですから、ある程度の「枠内」に収まっているように見えるのです。
人はどうしても「平均」や「調和」を好みますから、自然の動きも一定の範囲に収まっていてほしいと思うのでしょう。でも、気がつけば平年値そのものが変わっているように、自然界の「落ち着く先」もいま、ゆっくりと変化のフェーズに入っているのだと感じます。
図2 札幌(左)と岩見沢(右)の冬期降雪量の年変動(1989~2025年冬期)
【参考資料】
気象研究所:令和7年2月上旬の大雪に地球温暖化が影響
https://www.mext.go.jp/content/20250318-mxt_kankyou-000040989_1.pdf
株式会社北海道気象技術センター:2025年2月3日~4日の帯広の大雪(速報)
https://www.howtecc.jp/column/2025-%e5%b9%b42-%e6%9c%883-%e6%97%a5%ef%bd%9e4-%e6%97%a5%e3%81%ae%e5%b8%af%e5%ba%83%e3%81%ae%e5%a4%a7%e9%9b%aa%ef%bc%88%e9%80%9f%e5%a0%b1%ef%bc%89/