士別ふれあい広場「おもしろスポーツサイエンス」実施報告

須田 力

 士別市では毎年7月の第一土曜日、日曜日に社会福祉協議会の主催で「ふれあい広場」が開催されております。このイベントは、障がいのある人たちと障がいのない人たちとが車椅子の走行体験やパラスポーツでの交流を通してふれあう貴重な機会を提供しております。
 今年の士別ふれあい広場では、2024年7月7日(日)、士別市総合体育館のトレーニングルームの一角に「おもしろスポーツサイエンス」というコーナーで出展しました。出展内容を紹介します。

   
写真1 「床発電」圧電素子を敷き詰めたプレート上で足踏みやジャンプすると発揮されたパワー、運動エネルギーが蓄積されていく様子をレベルメーターで体感する。

  写真2 「ぶんぶんゴマ発電」。磁石をつけたコマを廻してコイルに近づけるとLEDが点灯することにより電磁誘導による発電の原理を学習する。

  写真3 「電流あみだくじ」。あみだくじの仕組みをブレエッドボードとジャンパー線を使って電流の流れを体得する。後ろに置かれた車椅子は、走行距離計測が装着されている。

 内山良朗氏は、昨年も実施した「床発電」、「ぶんぶんゴマ発電」に加えて、新趣向のブレッドボードを使った「電流あみだくじ」という知的ゲーム、須田は、「電卓を利用した車椅子用走行距離計」を紹介しました。今回は、製作が比較的簡単で運動量を測定できる歩行・走行距離計を紹介します。

改造電卓を使った歩行、自転車、車椅子の走行距離の計測

 電卓は、操作が簡単で工作で失敗したりこわれてもダメージの少ない点で100円ショップの電卓が適当です。まず電卓のカウンタ機能を確認しましょう。

(1)電卓のカウンタ機能を確認する

 手元の電卓をクリアして初期値(例えば“1”をセットしたあと、「+」を押し、「=」を押すと、最初にセットした値は、一回目は押してもそのまま“1”、「=」の2回目を押すと“2”、さらに押すと“3”と最初にセットした値が積算された値が表示されます。

(2)フットスイッチの接地・離地の信号を電卓の「=」キーに入れ運動量の測定に利用する

写真5 フットスイッチとケーブル、電卓カウンタ。荒天などで屋外の歩行ランニングが困難な時の室内トレーニング。
写真4 踏み台昇降トレーニング高さ0.2mの踏み台にフットスイッチを敷き電卓の初期値を0.2とし「+」キーを押し運動開始。昇降ので片足がフットスイッチを踏むたびに、積算された到達高さ(下降した高さも含む)が表示される。

  使い方(室内周回歩行・ランニング)
 ① フットスイッチのコネクタを電卓に差し込む。 
 ② 電卓をクリア(ゼロにする)。
 ③ 距離をセットする。一周42.2mの場合、初期値として
  “42.2”、次に「+」キーを押す。

 ④ 周回してフットスイッチを踏むごとに、42.2➡84.4➡
  126.6と走行距離が積算表示されます。

(3)工作可能な電卓は?

写真6 上:100円ショップの電卓左から右にA~Dの4種。下:それぞれの電卓の裏蓋を外すと半田工作可能な電卓は、CおよびDでAおよびBは困難。(基板部で「=」端子の工作が可能リード線を半田づけできれば入力端子を取り付けることによりカウンタ機能を備えた電卓として利用できます。D(ダイソーの電卓34)が最も工作しやすいのですが、残念ながら現在販売されておりません。

(4)電卓を工作なしでそのまま利用する方法

写真7 フットスイッチと電卓の「=」キーとの接続部の上面(左)と断面(右)
  図1 写真7の断面図。フットスイッチの接地・離
    地の
動きを電卓の「=」キーに連動させる。

(5)自転車、車いすの走行距離計
 自転車、車椅子での運動は、車輪の回転を磁石と磁気センサーで検知して、磁気スイッチのON/OFFの信号を電卓に入れて距離を計測します。

   
写真8 100円ショップの電卓の裏パネルを開いて「=」端子2か所にリード線を半田づけして入力端子をつける。

  写真9 自転車のハンドルに電卓を取り付けた走行距離計。前輪のフォーク部に磁気センサーとスポーク部にマグネットを装着する。電卓の初期値に車輪の直径×円周率(m)の値をセットして自転車を走行すると走行距離が表示される。   写真10 車椅子走行距離計。車椅子の車輪の回転数を検出するパルスを電卓へ出力する。車輪の直径×円周率の値(m)をセットして走行すると、走行距離が表示される。


写真11 100円ショップの回転テーブルを車輪に使ったウォーキングメジャー(距離計測器)
写真12 手づくりウォーキングメジャー(写真11)を使ってコースの距離を計測し、ウォーキングマップを作成した士別市温根別小中学校の生徒たち。(北海道新聞、2010年7月、士別市温根別)

おわりに

 以上紹介した電卓を利用した運動量測定装置は、工作にど素人の筆者の試作品です。実用に耐えられる自信はありませんが、写真9のママチャリのハンドルに取り付けた距離計はビニール袋に入れると雨天時の使用にも耐え、ボタン電池の交換もせず3年間使用できました。磁気スイッチは100均では防犯ブザーから外して使えますが、通販で一個100円くらいの価格で入手できます。マグネットやボタン電池は乳幼児が飲み込む危険、差し込みピンは怪我の危険があります。手の届かない所に保管してください。安価な材料ばかりですが、PP板は再利用するか、別な用途のグッズの材料に利用していただけると幸いです。問題点のご指摘、改善点のアドバイスは大歓迎です。

須田 力(NPO法人雪氷ネットワーク)
E-mail: sudariki●poppy.ocn.ne.jp 
(メールでご連絡の場合は●を@に変えてお送りください)